<a href="http://ameblo.jp/fujiko-diary/entry-11264451235.html">扉をたたく人</a>
妻に先立たれた老大学教授(ウォルター)は生きがいもなく、無意味な日々を過ごしている。
昨日みた『シングルマン』もそうだけど、
歳を重ねた男の孤独は、自らが周囲と壁を作りがちになるとこが余計に切ない。
ある時、ウォルターは、若いタレク(アラブ・シリア人)と知り合い、
ジャンベ(アフリカの打楽器)を教わるようになる。
人種、年齢を超え、ただ音楽を通し2人が心を通わせていく姿は、見ていて心が和む。
じきにウォルターは、若いストリートミュージシャンたちに混じりジャンベを叩くようになる。
音楽には、国境も差別も無い。誰をも受け入れてくれる。
ところが、話は一転。
タレクは不法滞在として拘束される。
そこからは、今のアメリカの現状に話はなっていく。
9.11以来、アメリカは移住者に対し取締りが厳しくなった。
特にアラブからの人間には厳しい。
相手が人であることさえ忘れたような取り扱い方だ。
シリアへ送還されれば、タレクは2度と国外脱出は無理となる。
ウォルターは出来る限り力を尽くし、友を助けることに心血注ぐのだけれど・・・
シリアは今現在も情勢が悪い。
先週も国(政府軍)が国民を100名以上殺している。
自由を叫ぶことも許されない。
今尚、国連も手を拱いているだけ。
「彼(タレク)は、何も悪いことはしていない」と叫ぶウォルターの声も監視官には響かない。
タレクの母(アラブ人)と彼女ゼイナブ(アフリカ人)とウォルター(アメリカ人)の3人が
フェリーから自由の女神を眺めて、はしゃぐシーンがある。
それは、かつて人種のるつぼであるとこのアメリカの象徴であったはず。
世界貿易センタービルが無くなったのは風景の問題だけでなく、
自由の国アメリカの心まで変えられてしまった哀しい姿。
ラスト、NYのプラットホームでひとりウォルターがジャンベ叩くシーンがある。
それは彼の心の叫びだ。叫んで、叫んで、叫びまくる。
誰の心にも響かないのか。響かなければおかしい。響けばきっと何かが変わる。
変わることを信じ、きっと今日もウォルターはジャンベを叩いていると思う。
この作品をみ終わってから、YouTubeで『9.11』の映像をみた。
何も考えなくてもその映像で背筋が冷たくなった。
アメリカが心を固くする意味がわかる。アラブに向け敵意を放つのはわかる。
それでも、お互い『何』を恨むか、そこを見誤らないで欲しいと祈る。
アメリカの映画から世界のことを知る機会は多い。
生きがいをもたない孤独な大学教授が主人公の映画を2つ続けてみた。
それが、どんな違うスートリーになるのか、見比べたくて借りてみた。
両作品とも、心の扉を開くことで、世の中の見え方が変わってくることを教えてくれる。