悠久の片隅

日々の記録

<a href="http://ameblo.jp/fujiko-diary/entry-10689713752.html">シェリ</a>

虚無のオペラ (文春文庫 (こ29-3))/小池 真理子

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ようやく読了。

8歳年下の不倫相手(妻子もち)との別れの話。

そっか・・・

小池真理子は私より10歳上なんだ・・・・・

納得(笑)

小説を読んでいると、話の中で時折音楽の話題が出る。

そんな時、私は必ずどんな曲か聴いてみる。

クラッシックでもジャズでも曲名だけでは感じられない。

だから聴いてみたくなる。

この本の主人公は

ヘンデルのアリア』が好きらしい。(アリアとはオペラの聞かせどころの独唱)

私はヘンデルのアリアの中では『私を泣かせて下さい』が好き。

誰でも耳にしたことがあると思う。

話の前半の部分で、不倫相手の男(ピアニスト)は言う。

「どんな悲劇を描いても、オペラは甘美なんだよね。絶望の歌を歌いながら、どこにも絶望がない。」

その一文を読みながら、

それはこの物語のことでもあると推測する。

不倫の絶望を描きながら、そんな絶望の中の甘美を、官能的な文章で著わすのだろうと、

思ってた。

どんな不倫もその哀しみと美しさの部分だけを誇張して描く。小説なんてそんなもの。

私はそんな穿った見方をしてた。

でもね

読んでるうちにそうではないことに気付く。

それは男が思っているだけのこと。

8歳年上の女にとっては、

『男の絶望の無さが絶望なのだと』

そして読み終わって気付くの。

そうだ、この本は『虚無のオペラ』だって(笑)

人生も終盤に差し掛かった女にとっては

恋よりも

もうその先のモノが見えてしまっているの。

人生の終盤にあるものを小池真理子

『衰弱の湖』と言う。

衰弱の湖に向かって女は一歩づつ歩み始めている。

でも男はその衰弱の湖の存在をまだ露ほども知らない。

私にも見えてきている。衰弱の湖。

その衰弱の湖を前にすると

燃え盛る恋も虚しさ・・・としか感じられない。

夢を失うわけでは無いのだけど

先の現実から目を背けることも出来なくなってくる。

そのものの大きさに恐れをなす。

この本の解説を高樹のぶ子が書いている。その文章がいい。

『恋のせつなさは、

弱い人間が真似すれば見苦しくなる。

強い人間にしか生み出せない美なのだ』

哀しみに耐えることが美だと言うのなら、

私は女としてその美の中に生きるのも悪くないと思う。

そして、この小説と相対して『コレットのシェリ』を挙げている。

コレットのシェリは、

私が先月から探していた本なのです!

本屋を3軒ほどまわったけど、どこにも置いてなくて、

シェリが買えずに、たまたま店頭で平積みになっていたこの『虚無のオペラ』を買ってきた。

シェリ (岩波文庫)/コレット

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偶然とも言えないほどの偶然に

やはりシェリを1度は読んでみたいと思う。