悠久の片隅

日々の記録

遥かなるケンブリッジ

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

『若き数学者のアメリカ』に続いて『遥かなるケンブリッジ

今年読んだ本の中でも、この2冊は突出して面白かった。


私、認識を誤まってた。

私は、アメリカで見るもの聞くもの全てこれがアメリカだー!と思ってたけど、

この本を読むと、私の知ってるアメリカは、所々イギリスだったみたい(笑)

私がアメリカでホームステイしたおうちはイギリス系の家庭だった。

アメリカで経験すること全てがアメリカでは無いところが、アメリカってことだ。

少しはわかったつもりだったけど、自分の思い込み先行でショック。


イギリス人の生き方の違いには、考えさせられるものがある。

私は日本人のストイックさは、世界一だと思ってたけど、

イギリス人のストイックさは質が違う。

イギリスでは古い物ほど、良いとされる。

Newは、好まれない。

だから古くてすきま風びゅうびゅうな傾いた家に好んで住む。

建て直すのは、クレイジーなのだ。

快適さを追求するより、古いものを大切にしていますという誇り。

暮らしもかなり質素。

やせ我慢してでも快適でない暮らしをすることが美徳みたい、

そんな感じがする。

イギリスでは、バスタブにお湯を1/3くらいしか溜めない。

溜めないというか・・・・・・・

出ない(涙)

オーストラリアもそうだったけど、

バスタブに1/3くらいお湯を入れると、そこで止まってしまう。

毎日寝そべるようにして1/3のお湯に浸かるお風呂は涙モノです。

うちの父はオーストラリアでの4年間、1度もお風呂に入らず、

シャワーで済ませてたみたいだけど。

電気も相当暗い。

日本は、資源をジャブジャブ使うのがデフォなんだろうね。

考えてみれば、エネルギー自給率の低い日本が、エネルギー自給率100%のイギリスより、

1家庭当たりの電気消費量が多いって、多分それで何か心に得ている。

それで他国から高いエネルギー買って、金が無い、金が無いって・・・・・、

本当は原発以前の問題なのだろうけど。

イギリスは食にしても、とにかく暮らしぶりが質素。食料自給率も70%以上なのにね。

子供のお昼が、サンドイッチ(ジャム塗っただけ)とリンゴかバナナかニンジン1個。

私もアメリカでは、それだけ持って学校行ってた。

日本なら子供の栄養面で大問題なるレベルだけど、食に関して無頓着なんだと思う。

それでも、平均寿命は3歳ほどしか違わない。

3年が大きいんだか、小さいんだかは、考え方は人それぞれだけど。


私、イギリスの学校のことは、まるっきり知らなかったから、この本読んでかなり驚いた。

算数の時間に絵を描いている子がいたり、絵の時間に本を読んでいる子がいたり、

それに対し、先生も仲間も何も言わない。本人が幸せである限り、誰も干渉しない。

と。

自分勝手な人間を製造しているようなもんだ(笑)

アメリカも自由だけど、普通に集団行動はとる。それは躾けられる。

イギリスは、各自が個性的なまま大人になっていく、

そして、集団行動が出来ない。

個人でコツコツやるから、ノーベル賞受賞者が多く、

集団で研究することはしないから、

創造性豊かにアイデアを生み出せても、商品開発はしない。

紳士の国イギリスは、それを良しとしている。

生産性のあるものに価値を感じていない。

感じていないどころか、嫌悪を抱くみたい。

イギリス紳士たるもの、努力などせず、鷹揚と構えているのが、素敵なことなのだ!

日本人のように経済に囚われて働くしか脳のない人間は、彼等にとっては恥ずべきこと。

哲学や思想など生産性の無いものを学ぶことがステイタスで、

生産と直結したものは、浅ましいという考えのようだ。

藤原分析面白いのは、

イギリスのあの陰鬱な空が、気が外に向かず、内側に思考する哲学や数学に向いてるんじゃないかと。

これには私も深く同意する。

映画などみててずっと思ってた。あの灰色な空は、どうにかならないものか・・・・・

画面の暗さがどうにも心まで暗くする・・・・・

イギリスは産業革命で色々生み出しはしたけど、その後は老大国といわれ衰退の一歩。

そりゃ、努力して稼ぐことが恥ずべきことという信条なら、そうなるわ。

裏庭で木や花を育てること、スポーツを楽しむこと、そんなことが好まれる。

それでも、創造性の産業は活発なので、やはり生み出す力は国民性なのだと思う。

で、思ったんだけど、

国の経済って、難しいこといっぱいあるんだろうけど、

国民性(人間性)抜きに語れない。

日本がずっとデフレなのは、安全第一、リスクを負えない(お金を刷れない)国民性だと思うし、

イギリスの経済が伸びなかったのも、努力は紳士の恥と思う国民性がある。

経済も、お金が勝手に動いてるわけではない。

すべて人間の手でやってることなのだから、お金の操作だけ考えても何も見えてこないんじゃないかな。

イギリスは、他者からは経済で負け組と見えるとしても

イギリス人からしたら、コマネズミで一生を終える人生が負け組なんだと思う。

ツイッターで、日本人は3秒に1回「眠い」「疲れた」と、つぶやいているらしいから、

そこだけを取り出せば、そんな生活はクレイジーと見えるのだと思う。

まずいパン齧って、それでも毅然として生きられることが勝ち組なのでしょうね。

世界は、色んな国があって、色んな考え方がある。

いくら省エネと言っても、お湯が1/3のお風呂は日本人には無理だし、

ガンバレと言っても、努力が恥のイギリス人には無理。

民族の習慣、文化、良くも悪くも、こればかりはどうしようもないのだと思う。

自分に合うよう社会を変えていこうという民族(人)と、

今ある社会を変えず、受け入れて生きていこうという民族(人)。

世界には、社会に対して2通りの考えかたがあるように思う。


ケンブリッジは、入学試験に受かると、

1年間の入学猶予が与えられて、

その間、働くなり、ボランティアをするなり、海外へ行くなり、

社会勉強を勧められるらしい。

これはいいなー。

『常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションである』

これはアインシュタインの言葉。

自分の偏見は、他人の常識で

他人の常識は、自分の偏見。

常識とは、所詮その程度のもの。

それを体感するのに、1年の猶予は必要に思います。

ぶち破る人間になって欲しい・・・

大人が子供にそういう時間を作ってあげることが、ものすごく大事に思う。

特に感受性の強い年代の内に。

一般に、偏見が悪いことのように言うけど、誰にでも偏見はある。

ただ、偏見も常識も、所詮自分本位の見方、その程度のものであることを知れば、

差別などしない。

橋下も差別と感じるなら

「そのような世の中だから、私が総理大臣になって日本を変えたいんです」

と、ハッキリ言ったらいいのに。それなら応援する。


グローバル化というけど、

英語を習えばいいというものでない。

それより若い人に世界の感覚を体感して欲しい。

中国の砂漠に立って遥か昔を思うと、

四大文明の発祥の太古、広大な土地を眺めれば、遥天の下に広がる地は全部自分たちのもの。

そう感じられると思う。それに地図は関係無い。

日本は海から出たら、そこは日本とは思わない。この感覚の差は、理論と多分違う。感覚。

英語なんてものは、

『R』は巻き舌と、しつこいくらい習うけど、

イギリスやオーストラリアの英語は、舌は巻かない。

DOORはドー

くらいな感じ。

ERは、イーアー。

Rをあまりハッキリ言わない。

その他も微妙に違う。

学校で習うのはアメリカ英語なので、最初はまったく聞き取れない。

そういうのは、教科書ではわからない。

海外の感触がわかれば、これから新たな市場もきっと見つかる。

生きる世界も広がる。

そういう感覚を養うことで、日本の新たな道を見いだしてほしい。