機密
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/06/26
- メディア: 文庫
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この本の中に、『ペンタゴンペーパーズ』という出来事が書いてあります。
アメリカ国防長官が極秘扱いで、ベトナム戦争の報告書を作成させた。
そこには国民の知らないベトナム戦争の真実が隠されていた。
その政府の極秘書類をニューヨークタイムズが入手、
内容を新聞に掲載するか、しないか、社内でも、顧問弁護士の間でも見解が分かれた。
国家機密を公表することは、国家の安全にかかわることで、やってはならない。法律違反であるということ。
もう一方で、報道には報道の自由の条文がある。
国民には国家のすべてを知る権利、知らされる権利があるという解釈。
『安全保障』と『報道の自由』どちらが優先されるべきか。
そして、ついに朝刊一面に記事が掲載されたのです。
歴代の政権が国民を欺いてきたことがわかる記事と極秘書類の原文。
翌日ニクソン大統領の承認を受け、司法長官が、ニューヨークタイムズに記事差し止めを要求。
いったいんは輪転機が止まったものの、「政府の圧力に負けるな。」と社長がGoサインをだし、翌日も掲載。
翌日ニクソン政権は連邦地裁に掲載停止を求め、地裁の仮処分決定により、記事は3日間の掲載で終わりを告げる。
仮処分が決まると、今度はライバル社のワシントンポストがその書類を入手、
同じように社内で論争となる。結果Goサインが出て、今度はワシントンポストが掲載に踏み切ります。
連邦地裁では、掲載継続を認めるか、政府の要求を認め掲載差し止め命令を出すかの審理が行われました。
ニューヨークタイムズ側は、国民の知る権利、報道の自由を主張します。
政府は、機密を報道することはスパイ防止法に違反する。アメリカの国家安全保障を危機にさらす行為だと主張します。
では、なにが「機密」なのか、という点が、問題になりました。
これについて政府は、行政府が機密だと指定しているのだから機密だ。
どこがどう機密なのかを説明したら、機密が判明してしまうから、公開の法廷では説明できないと主張しました。
これは、1971年のことです。今から40年以上前。
連邦地裁の判決はスピーディーに行われました。
掲載が6月13日、政府の差し止め要求が15日、判決が19日。
異例の早さに思います。
地裁は新聞社に勝訴の判決を出します。
結局裁判は連邦最高裁判所までいき、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト共に勝訴となりました。
判決は「自由主義あってこそ、安全保障は成り立つ」という論理でした。
連載は再開され、ベトナムから撤退すべきと唱える国民が増え、国民の声が国を動かしたのです。
1971年というと、新猿の惑星の頃で、反戦運動が活発になった裏にこういうことがあったのがわかります。
アメリカの強さは、逮捕を恐れないことです。
自分が正しいと思ったことで逮捕されるとしたら、それはそれで甘受しようという強さ。
法を犯すことが罪でなく、正義を貫くことをやめることが罪なのだという自覚。
愛国心とは、国を盲目的に愛し、従うことではないと思います。
今日本で懸案となっている国家秘密保護法案。
少しだけ国会中継みてたけど、私はそれほど悪印象はもてなかった。
特定機密とは、防衛・外交・特定有害活動・テロリズムの4分野で、
私のような一般主婦がどう転んでも国家機密に触れるようなことは、まずない。
何を特定機密としていくかも、有識者会議に諮られるようですし、
それがどのような見識の人があてられるのかによっても、変わってくるのかもしれないですけど、
私は単純に、論点がズレているのではないかと思うわけで。
要するに、中国の力が強大になってきた今、
アメリカと日本で軍事機密の共有をして、対中国あるいは、対世界への防衛を諮りましょう♪
と、アメリカからもちかけられた。
日本には、守秘義務の観念が薄いから、アメリカの機密も日本から漏洩してしまう。
これじゃあ、共有出来ないし、国を守ることなんて出来ない。
日本ももっと危機感もちなさいよ。何故他人ごとなのよ?とでも、アメリカに言われたんでしょ(笑)
でも、この法案は、対中国対策です!とハッキリ言えば、火に油注ぐことになるから、
なんだか焦点ボヤケちゃってるんじゃないの?
多分、中国や韓国は、この法案成立は嫌でしょうね。
でも、日本政府は国民に信頼がまったくないことが露呈(笑)
それと、少しでも戦争にかかわりそうなことは、生理的に受け入れられないというのがある。
今現実に日本を守ってくれているのはアメリカで、
アメリカの軍事機密でもって、日本が守られているというのはあると思う。
その現実に、日本はいつになったら目を向けるのかな。
私は別に政府に肩入れするつもりはないけど、
アメリカ政府の「どこがどう機密なのかを説明したら、機密が判明してしまう」という言い分はわかるような気がする。
とにかくこの法案は、実行することでなく、法案を通すことが中国への牽制になる。
だから強引でもなんでも、日本の姿勢を示したいように私には思える。
中国がそれとなくウロチョロしているし。
中国を今脅威に感じているのは、日本よりアメリカなのかもしれない。