悠久の片隅

日々の記録

<a href="http://ameblo.jp/fujiko-diary/entry-11239687822.html">芥川 Kappa</a>

小説『河童』の冒頭は、こんなです。

どうか、Kappaと発音して下さい。

( °д°)あせる わざわざこの注意書きの意味わかりますか?

河童は、Kappaとしか読まないと思うのだけど・・・・・

そこで私がまず考えたのが、

この頃(昭和2年)は『河童』という漢字がまだ一般的には使われていなかった?

だから読めないといけないから、注釈つけてくれた?

と、一瞬考えたけど・・・

違うな。

遠野物語ですでに『河童』で使われてるし。

それに

芥川はそんなつまんない注釈入れる人じゃない。

芥川小説20作品立て続けに読んで彼の作風少し慣れた。

これは注釈じゃなく、伏線だと思う。

だから、

やっぱり考える。

どうか、Kappaと発音して下さい。

わからない。

Kappaと書かずに、かっぱだって、カッパだっていいハズ。

むしろ、そっちの方が説明(ルビ)としてなら親切でしょ。

アルファベットを使いたかったそのワケは?

何かあると思うけど・・・わからない・・・・・

最初の一行だけで、これだけ悩まされるんだから、

芥川って嫌い面白いパー

作家の癖を掴む。

癖を掴むと、また興味が湧いてくる。

そのまま読み進めます。

主人公は、精神病院の患者第23号。

上高地から穂高の山に向かう途中、河童を見つけ、捕まえようとして穴に落ちてしまいます。

そこは河童の国だった・・・・・

これって、

不思議の国のアリスだ。

芥川がアリスを読んだかどうかって?

読んでると思うパー

証拠は・・・・

無い(笑)

でも、読んでないハズが無い。

芥川は、他の作品を下地にアレンジし書いているものが多い。

そう言えば、

リッチーブラックモアもそう。

他の人のフレーズをアプリケーションしてるものが多い。

それがパクリかと言うと、

芸術をまた別の形の芸術に移し変えているのだから、即パクリとは言えないように思う。

リッチーはあまりに自然に、それら(バロックなど)のフレーズを醸し出す、

リッチーの中にバッハが沁み込んでいて黙っていてもそのフレーズが出てきてしまうように。

話を戻しますあせる

主人公は河童王国の『特別保護住人』になった。

友好的で良かったです。

河童王国は人間社会と同程度の文明ですが、考え方はまったく違います。

河童王国では、産まれてくるのもお腹の子の意志による。

産まれてくるか、やめるか、聞かれたお腹の子はこう答えました。

「僕は生まれたくありません。第一僕のお父さんの遺伝は精神病だけで大へんです。

その上、僕は河童的存在を悪いと信じていますから。」

それにより、この河童の子は堕胎されました。

これは、芥川自身の独白です。

芥川は生みの母が精神病であったことを怖れ、遺伝を怖れていました。

「発狂するか死ぬしかない」これは芥川の言葉です。

この河童を書いた同じ年、芥川は自殺をします。享年36歳。

河童伝説は、堕胎を隠す意味合いもあると遠野物語にはあるので、

そこから芥川はこの河童という物語を思いついたのでしょうね。

イプセンの幽霊という小説にも遺伝・生まれてくる子の権利のキーワードが書かれているようです。

そして、河童王国には

詩人のかっぱも

哲学者のかっぱも、

音楽家のかっぱもいます。

最初は人間社会と同程度の文明と言いましたが、

話が進むにつれ、人間より進化しているとも言ってます。

ここで、ふと頭に描いたのですが、

これは、星新一のボッコちゃんか?

遠野物語の昔のイメージの河童物語じゃなく、

人間社会より高度な知能を持ったSF的KappaWorld。

最初の

どうか、Kappaと発音して下さい。

これは、発音というよりニュアンスとしてKappaの種を植えてみたんじゃないかと(遊び心)

河童と言われると人間より『下』の扱いをしたくなるが

芥川にとっては、このかっぱこそ自分で、

だから人間と同等もしくはKappaの方が上であることを(コッソリ)言いたかったんじゃないでしょうか。

芥川は、横文字かぶれなとこありますしね(笑)

これはあくまで私の想像です。

不思議の国のアリス

異次元ワールドに飛び込んで、アリスがひとりで冒険に挑みました。

この芥川の河童という物語りもそうなのですけど。

実は

人間芥川自身は実際は河童王国側の住人で、

現在いるこの人間社会こそが異次元ワールドにしか思えなかったんじゃないかと思います。

詩人のかっぱも

哲学者のかっぱも

音楽家のかっぱも

全部芥川自身。

だから人間社会では、居心地がよくない。

かといって

河童王国の河童たちも、人間社会と同じように悩み続けている。

河童の世界も人間の世界も芥川にとって安住の場所ではなかった・・・

この河童という小説は、

芥川のベストアルバムみたいに感じます。

芥川の他の作品の要素がふんだんに詰め込まれています。

『古池や 河童飛び込む 水の音』には、思わず笑っちゃいました。

芥川のパクリ、ブラボー!!!

寓話の様相をした私小説で、

その時代の背景、思想、社会への風刺、批判、

芸術論、

自己の性(さが)を語り、遺書であり、

こういう形式は、他の作家ではありえないでしょ。

溢れる知識と痛いほどの心の叫びを文字に凝縮し静かに放つ。

その計算されつくした美しさ(調和)に頭が下がるばかりです。

芥川は自分にあるのは神経だけだと言います。

イメージとして、皮膚も肉も無く、神経がむき出しになってると想像します。

あまりにも痛々しいです。

死刑そのものでなくても、その言葉だけで殺されてしまう。

もう生きることの限界だったのでしょうね。