悠久の片隅

日々の記録

トロイ

トロイア戦争は、美しくも悲しい愛の物語です。

トロイ [DVD]

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ギリシャ神話のトロイア戦争を題材にした映画。

ギリシャ神話なので神あってのお話しなのだけど、この映画に神は出てこない。

これはあくまでトロイア戦争を題材にした大スペクタクル映画で、

アメリカはこういうヒーローもの描くの好きだし、上手い。

ギリシャ人がなんと言おうと面白い!!!

とはいえ、

ギリシャ神話はギリシャ人にとってはきっと崇高なもので、

トロイア戦争は、古代の英雄とそして神をも2分するような歴史的大戦争で

親子愛、夫婦愛、兄弟愛、師弟愛、友の愛、敵への愛、不倫愛、不倫した者への愛、

そして神に対する愛が随所に溢れた私は愛の物語でもあると思う。

だから見るほうが、ただのスペクタクルとかヒーロー戦士とかアクションだけで見て神の存在を無視してしまったら寂しすぎる。

セリフの1つ1つに神の存在が感じられる素敵な映画と思う。


もともとトロイア戦争は地上に増えすぎた人間を減らす為に、神の王様ゼウスが大戦争を画策したもので、

アキレスとヘクトルの壮絶な一騎打ちは

天上にいるゼウスが黄金の天秤に2人をかけ、ゆっくり眺めていた。

そうして天秤の下がったヘクトルから力を奪い、上がったアキレスに力を授けている。

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勝負に勝ち負けはつきもので、

どちらが強いわけでも、どちらが正しいわけでもなく、

それは神が決めたことで、それを敬虔に受け入れる。

神の気まぐれだろうと、なんだろうと、神の意志を尊重し崇める。

そうやって理不尽さえ受け入れ生きていく。

だからトロイアの神殿の巨大な神々の像が次々倒されていくシーンは、神を信じない私でも悲しくなった。

あれは像だけど、彼等にとっては生きていくための命でシンボルなのだから。


ヘクトルの父である国王が、ヘクトルの亡骸を返してもらう為、単身敵地アキレスの元へ向かうとこは、

ん~~~ 日本の武将には無いんじゃないかな。

たとえば、

長男が戦場で殺されました。だから敵の元へ行って「手厚く葬ってやりたいから、息子の死体を返してください。」

無いな・・・

戦いとはそういうもので、勇敢であればあるほどしない。

でもギリシャ神話の国王は、息子を殺したアキレスの元へ行き、息子を殺したその手にキスをする。

国王とアキレスは敵とはいえ、お互いの不幸に涙する。

戦う者が悲しみを知らないはずがない。悲しみの共有はたとえ敵同士でもありえるのだ。

年老いた国王と若き英雄のこの場面に全米が泣いた(嘘)

それは嘘だけど、これは映像の方が本より良いかも。

国王役の演技が良いのかな。

そしてヘクトルの死を悼み、弔い期間(12日間)を休戦とする。

国王もヘクトルもアキレスも、国民のヒーローで、好んで戦っていたわけでもない。

不幸だ。不幸だけど自分の生きる道とし、命を落とした。

小説親鸞の中で『命懸けでやるのはよい。が、命を捨ててはいけない』という言葉があったけど、

彼等は命を捨ててはいない。自分の生き方をしたのだ。


そもそも、この戦争はゼウスの策略となっているけど、

トロイア国王の次男(パリス)と、ギリシャ国王の后(ヘレン)の不倫から始まった。

よその国のお后様を王子が連れて帰ってきちゃったのだから、どうしょもない。

それがトロイアギリシャの国と国との争いになり、10年間の戦争になってしまったのだから、

純愛であれば純愛であるほど、不幸に思う。

ギリシャ神話のトロイも是非読んでいただきたい作品。