悠久の片隅

日々の記録

ホームズ対フロイト

友達が推理小説を読んでいるというので、感化された。

この本、推理小説と思ったけど、タイトルからしてそれっぽいんだけど、

推理より『罪と罰』に近い。

エミリー(主人公)が、後見人を殺してしまった。

殺してしまったといっても、自己防衛で突き飛ばしたら崖から落ちたのだから、過失なんだろうけど。

そのまま逃げてしまったので、罪悪感に苛まれる心理描写が主で。

エミリーの様子が変なことを心配した友人サラがフロイトの診療をすすめ、精神分析が始まる。


実際のフロイトの診療とはこんな感じだったのか、と、そこに頷きながら読んでます。

フロイトは夢鑑定からエミリーが子供の頃、後見人から性的虐待を受けていたことを聞き出す。

でもフロイトは、その話が事実か、虚偽かも疑う。

心理というのは、本人の自覚しているものと、本人さえ自覚しないものがある。

人は誰でも心の奥底に闇を抱えている。

この本を推理小説というなら、事件の推理より、心の闇を探り出すという意味での推理小説に思う。

フロイトは、精神分析を遺跡の発掘のイメージをもっていて、

遺跡を傷つけることのないように、想像をしながら、そっと深くまで掘り起こしていく。

催眠療法というのも、自覚の無い心の奥底を引っ張り出し、語らせ、

自分の心と向き合わせることで、病気が治癒するという治療法に思う。


実際のフロイトの研究にかなりの部分なぞらえてあるので、

この著者は、フロイトの心理学を描きたかったのかな。

第一部しか読んでないので何が焦点かわからないけど。

まだホームズ出てこないし(笑)

エミリーが、幼くして両親を事故でなくしたこと、

その後、後見人に性的虐待を受けていたこと、

サラと同性愛にいたること、

みな、フロイトのための設定になってる。

その中で、サラの人物設定がなかなか面白い。

彼女はユダヤ人で、

ユダヤ人であるがゆえ、正義など信じていない。

ユダヤ人で得をすることのひとつは、この文明社会の完全なメンバーではないことよ。

だから、わたしは彼らの正義を信じない。

もちろん正しく生きてるし、法律に反することはなるべくしてはいけないわ。

だけど、同時に正義は期待してないのよ。

それと同様、女性が正当な裁判を受けられるとも信じていない。

エミリーは、罪悪感に苛まれ自首を考えるが、

サラは、ギリシャ神話、ダーウィンの説を持ち出し、自首する必要性がないことを並べ立てる。

物事は、

取り方次第。

自分の背負ってるものによるのかもしれない。