悠久の片隅

日々の記録

ミクロメガス

カンディード 他五篇 (岩波文庫)

カンディード 他五篇 (岩波文庫)

どれも寓話のようで楽しい。

『ミクロメガス』

ギリシャ語でミクロスは小さい、メガスは大きい、万物の相対性が主の物語)

土星人が宇宙に飛び立とうとする時、

土星人の彼女が叫ぶ

「薄情な人だわ!どこを駆けめぐろうというの。なにがお望みなの。

この天体の五つの衛星もあんあたよりはまだ落ち着きがあるし、環にしてもあんたほど変わりやすくないわ。

これでおしまいね。もう決して誰も愛してやるものですか。」

これは土星の不規則衛星を言ってるのかな。

環も当時の天体望遠鏡では、不安定な見え方だったのかもしれない。

土星』そのものと『男性』の比喩!最高だ。

いつの時代も、男は野望を抱え、常に目は外へ向き、

そして「もう誰も愛さない」と泣いた女は、

その舌根も乾かないうちに、口先だけの若い男と手と手をとりあっている。

男性の身勝手さと、女性の持ち出す論理のめちゃくちゃなとこ、

ヴォルテールはうまいなぁ。


こうしてシリウス星のミクロメガスと土星人は宇宙へ旅立つ。

ミクロメガスは、地球を36時間で一周するほどの巨人。

ミクロメガスはすでに他の多くの星も見て、自分より優れている生物、劣っている生物を知っている。

土星人は土星以外を知らないから、つい自分を絶対値でみてしまう。

それが私たちをもじっているのだと思う。

ミクロメガスと土星人の両巨人が、地球に到達した。

そして微生物(人間)を発見する。

その微生物(人間)が、外見と違い高度な知識をもっていることに驚く。

そんな高度な知識をもっているなら、皆幸福に暮らしているかと思えば、

ちっぽけな分際が無限に大きな自尊心で、争い続けているという。

原因は小さな泥のかたまり(国土)

最後にミクロメガスは、地球に1冊の哲学書を置いていく。

開いてみれば

白紙だった・・・・・

ん~~~オチもいい。

この地球上では、真理に答はないんだと思う。


おそらく、アリにはゾウが見えない。

おそらく、ゾウにはアリが見えない。

それでも、アリもゾウもこの世に存在する。

皆、見えるものしか見えない。

私が見えているものなんて、実はほんの一部でしかないのかもしれない。

顕微鏡でも見えない世界があり、

宇宙の果てには、まだその先があるのかもしれない。

学校で習うことには、皆答えがある。あらかじめ答えが用意されている。

でも社会に出ると、答えのないことばかり。

こうやって最後が白紙であることを考えていくのが読書の楽しさかなと思う。