言葉の力、生きる力
- 作者: 柳田邦男
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/06/26
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ワンステップ、ツーステップの思考が癖になっている私に、物事はその先が大事なのだと、
気づかせてくれる。
戦争はいけない。
このことを小さい時から、無条件に叩き込まれてきた。
それはそれで良い。
こういうことは、理屈より無条件に体内に沁み込ませた方がいい。
でも、大人になったら、その先を見つめる目も大切になってくる。
不安、恐怖、怒りが、人格を変える。
トラやライオンのような強い動物だって、むやみな戦いはしかけない。
お腹が空くから狩りをして、自分の身の危険を感じて攻撃に出る。
動物、あるいは植物たちは共存が難しければテリトリーを作り、
なるべくかかわり合わないような生き方を長い歴史の間に体得してきたのだと思う。
むやみな殺生が生きる上で自分たちにとっての不利になることを、多分わかっている。
戦争がいけないというその先を見つめると、
人間の感情は、恐怖や怒り、または不安に駆られると、
人格を保つことが難しく、またそれが集団になると集団ヒステリー状態に陥る。
猿山の猿も一匹が騒ぐと、一斉にキーキー言い出すように
意味あって騒ぐというより、不安からの叫びであり、防御態勢のための攻撃態勢に思う。
戦争が人を変えてしまうのでなく、不安や恐怖が人を変えてしまうのだ。
なんて悲しいことなのでしょう。
実は、人間は臆病なのだと思う。
地球上の動物で人間が素手で勝てる相手は案外少なそうです。
イヌでさえ、ペットだからよいものの、野生のイヌなら私は怖い。
人間は本当は弱い。弱いから臆病で、強くありたい願望が強い・・・のかな。
アメリカ9.11同時多発テロのあと、ブッシュ政権の支持率は92%になったという。
報復とテロ殲滅のための軍事行動を支持する人も82%になったという。
尋常でない数字です。
今、アメリカ史上最低の大統領といわれるブッシュ大統領が、アメリカ史上最高の支持率があった。
イラク戦争がブッシュ大統領の責任か、集団ヒステリーに陥ったアメリカ国民が主導となっていたのか、
わからない気がします。
国家政策でこんな数字をたたき出すのは異常です。
こうなると、反対派がいても、声が反映されるわけもなく、無いのも同然。
いわゆる集団ヒステリーで走ってしまう。
世界貿易センターの2つのビルの崩壊により、アメリカ国民の感情に恐怖、怒り、不安が植え付けられた。
『大量破壊兵器うんぬん』は理屈、あるいは理論であって、
感情の方がコントロール不能となったということに思います。
戦争が人を悪魔に駆り立てるということの本質は、
不安、恐怖、怒りが、人間性を変えてしまうということ。
精神的ダメージを与えることを主とするのがテロリストです。
凄惨を極め、人の心に恐怖心を植え付けるのが目的です。
その反動が、イラク戦争での推定65万人のイラク人犠牲者です。
アメリカは強大な武力で倒そうとし、
武力で勝てないイスラムは恐怖で相手を倒そうとする。
お互いに報復しなければ気が済まないのはわかる。
何倍に返しても足りないほどの感情もわかる。
人間最後は理屈でなく感情だと思いますからね。
それでも、『倍返し』とか、冗談でも、
それを当然の権利のように身体のどこかに沁み込ませるのは私はとても怖く感じる。
赤穂浪士も報復はした。
でも彼等は最初から自刃という形ですべてのケリを自分で付ける覚悟あってのこと。
今の戦争は、テロ殲滅といっても、テロという国があるわけでなく世界中に散らばるテロリストは
どこの国で戦争しようが、終わりはない。
アメリカが攻撃するたびに、イスラムの国々も軍事力を強めるだけ。
アメリカが発狂すると、力を持っているだけに、世界への影響があまりに大きくて、
この前のシリア攻撃のの時のように世界が2つに割れてしまう。
話がアメリカまでそれてしまったけど、
ごくごく普通の人が、『恐怖』『怒り』『不安』によって、人格が変わってしまう。
これは戦争だけではなく、
本当に悲しいことです。
他者にとってのなんでもないことでも、ある人にとっては追い詰められるほどの
恐怖や不安なことっていっぱいあると思うのです。
今現時点での不安。将来に対する不安。
誰の心の中にもある不安の一番最大の不安が除かれると、人はそれだけで幸せに感じるでしょうね。
世の中をよくするというより、1つづつ不安を取り除くこと。
そういうシンプルだけど普遍的なことが一番難しいのかもしれない。