悠久の片隅

日々の記録

親鸞

親鸞 激動篇(上) (講談社文庫)/五木 寛之

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親鸞 激動篇(下) (講談社文庫)/五木 寛之

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親鸞激動編を一気に読んだ。

歎異抄の謎 (祥伝社新書)/五木 寛之

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親鸞と、親鸞を取り巻く人びとの個性に惹かれ、

痛快活劇として申し分なく面白い。

また、実在の親鸞として読むと『歎異抄の謎』が散りばめられている。

実在の人物を描いたにしては、少々ドラマチック過ぎる感も拭えませんが、

親鸞をダイナミックに捉え、そしてダイナミックの根底にはたえず愛が流れている珠玉の物語。

激動編の親鸞は、非常にもどかしい。

もどかしいというのは、

前作『親鸞 上下』で、人格者としてすでに完成し、一心に法然の教えを遂行していくかのように思えた親鸞が、

心許無く感じられる場面が多々出てくる。

真理を尋ねられても答えられず、

鉄杖のことにしても、

不遇な村に対しても

もう少しどうにか出来ないものかと。

いやいや、親鸞の念仏とはそういうものなのだ。と頭では思いながらも、

読んでいるこちらが絶望してしまうような。

論理というのは、

おかしなもので、

どんなに完璧に思えるものでも、必ず論破可能に思います。

どう伝えるか。

というのと、

どう受け取るか。

良いことを伝えようとしても、

受け取る方にもその器がなければ、伝わらない。

伝わらないどころか、かえって争いの種にもなる。

法然から受けた教えを世間に広めようとしても、

親鸞の思うところの念仏と世間の思うところの念仏は天と地ほど違う。

親鸞の『しかし念仏とはそういうものではない。』の悲痛な思いが随所にあらわれます。

念仏とは何か。

死後浄土にいくことで今の苦しみから救われるのか。

親鸞は答えをもたない。

親鸞法然の念仏を信じたのは、法然その人を信じたから。

何故法然を信じたかというと、法然が自分を信じてくれたから。

法然は生きた仏のような人で、その人が言うことだから信じることができた。

でも、それを伝える自分(親鸞)にはその器がない。

自分の信じることを伝えるには、相手に教えを叩き込むのでなく、親鸞自身が身の内を省みる。

『自分の考えを一方的に押しつけただけでは世の中は動かないのである。

人びとが大事にしているものに対しては、ちゃんと敬意をはらう。なにごともばかにしたりはしない。』

激動編の親鸞は、心許無いのですが、

本来人間とはそういうもので、

迷うのも、揺れ動くのも、誤まるのも、本来の人間の姿。

それゆえ最後は『他力本願』にたどり着くのかもしれない。

いや、普通はたどり着けない。

自分の力を信じることで生きてしまう。

大事なことは、言葉では伝わらない。

言葉にすると、違ってしまう。

『ナムアミダブツ』は、ご利益を願って唱す呪文ではない。

阿弥陀様の御心を思うとき、自然と心が口からこぼれるようなもの。

ただ阿弥陀様を信じる。

ただ阿弥陀様に愛されていることを感じる。

それだけでいい。

でも、親鸞の思いを推し進めようとした時に、

古来からの風習、しきたり、そこに生きる人びとの存在も否定することにもなってしまう。

人それぞれの思いは、その土地に住む者にとっては血であり、肉である。

親鸞は京を追放され、越後へ流罪となった。

『この土地にやってくるまで、自分は大きな誤解をしていた、と親鸞は思う。

田舎といえば、ひなびた農家の生活だけを想像していたのだ。

土地の人々はみな田や畠をたがやし、作物を育てる労働に明け暮れていると単純に考えていたのである。

しかし、実際に越後の土地を歩きまわっていると、それが都人の勝手な思いこみだったことに気付く。

自分の目で見る越後は、じつに多彩で豊かな土地だった。

海と、山と、川。

そこにさまざまな自然の恵みがあり、人びとは古くからそれを十分に活用して生きている。』

『しかし、越後の雪は親鸞の想像を絶していた。雪景色を美しいと感じるよりも、大自然の悪意のようにさえも思われる時がある。

その雪の中に暮らし、自分たちの営みを続けてきた雪国の人びとの粘りづよさには、ただ感動するしかない。

人びとは一体、なにを心の支えとしてこの雪の中を生き抜いてきたのか。

自分はこの地に、はたして念仏の種をまくことができるのだろうか。』

美しさは、怖ろしさと共に目の前に立ちはだかる。

人間の気質というのは、その地の何百年の歴史を経て培われたもので、

私が(?!)と思ったところで、昨日今日でどうにかなるものではない。

今年、越中に越してきたばかりの私は痛いほど共感してしまう。

そんなことを思いながら読み、いよいよ唯円も登場。完結編が楽しみです。

出家とその弟子 (新潮文庫)/倉田 百三

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親鸞唯円の会話に救われた思い出の本。。。