悠久の片隅

日々の記録

辻仁成

海峡の光 (新潮文庫)/辻 仁成

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様々に話題性をもった人(辻仁成)だけど、

この作品の前では、その才能に圧倒されるばかり。

刑務官の「わたし」と、そこに入所してきた受刑者の「花井」。

この関係のずっと以前、子供時代「わたし」は、花井にいじめを受けていた。

花井は優等生、一見良い人を装う陰での陰湿ないじめ。

大人になり、刑務官と受刑者となった今、2人の間に事件が起きるわけではない。

それでも、最初から最後まで走る緊張感。

何か起きるのではないか、何か起すのではないか、

その気持ちは「わたし」であり、読者であり、一体化していく。

「わたし」の心の描写は繊細に書かれ、花井の心の描写は一切ない。

読者に見えるのは花井の行動のみで、花井の心の闇の真相は描かれていない。

なにゆえ歪んだ心をもち、犯罪に走ったのかもまったく見えてこない。

それが緊張感であり、現実でもあり。

子供の頃受けた大きな心の傷は生涯の闇として、社会的立場とはまったく別の次元で

「わたし」の中に存在し続け、「わたし」を支配する。

海峡の光というタイトルではあっても、

見えてくるのは心の深いところ闇。

言動に出る出ないは別として、心の歪みは誰にでもある。

自覚があるかないかの違い。

私は、小説の内容もさることながら、辻仁成の豊かな表現力、文章力に惹かれる。

これだけの文章を書く人が、日本にどれだけいるのだろうか。

ツイッターに縁の無い私だけど、

エッセイを読んでから、気になって見るようになった。

豊かな表現力は、豊かな感受性から生まれていることを、彼のツイッターから知る。

辻仁成ツイッターで感じるのは、彼が『光』に敏感であること。

光、影、風、そして人、思い・・・

彼の口からこぼれる言葉の美しさ、心の感じ方にハっとさせられる。

ツイッターを見ていると、

息子くんのお弁当を作り、息子くんの学校の面談に行き、

コンサート前日に息子くんが体調を崩すと、「今はコンサートより息子」と言い切る。

そんな彼に離婚話が出た時、

彼が息子くんを手放すわけがないと思った。息子くん無しの人生は、今の彼には無いと思った。

離婚劇によって所属事務所から、コンサート中止を言い渡されたが、

その時はすでにチケット発売の後。

ファンの為にと、辻仁成自腹ツアーを断行。すべての手配を自らこなす。

息子くんの「やるっきゃないでしょ」の言葉にも励まされ、

ギター背負って真夏の日本を駆け巡った。

コンサートに行かれない私は応援の意味をこめて「コトノハナ」を購入。

「コトノハナ」Super Best of Jinsei Tsuji/PARIS ROCKS

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コンサートが終わると共に、

息子くんとの二人旅。

父親と息子の二人旅。カッコイイなー。

歌だけでなく、やることがロッカーだ。

息子くんの目から見てもカッコイイ父親であるに違いない。

子供の頃の旅の思い出は鮮烈。大人になってどこかへ行くのとは印象度がまるっきり違う。

美しいものはより美しく、怖ろしいものはより怖ろしく、リアルさを増して心に残る。

先日は、二人で森の中を歩いていた。魔女や妖精がいそうな森。

息子くんの心に一生残る思い出が出来たのではないかな。

不屈/辻仁成

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私はこの人の小説よりエッセイが好き。

近くの書店に買いに行ったら置いてなかった。

少し足を伸ばしたところの書店に置いてあった。

手に取ってレジへ行って気付いた。

(あっ・・・お財布忘れた・・・)