悠久の片隅

日々の記録

人間のジレンマ

この本も第四章になると身震いしてしまうようなことが書いてある。

正常な男性でも85%の精子に異常があるというのだ。

これはメディアでもだいぶ言われているようですが、ここまでとは思わなかった。

人間の精子は質が悪いという。

それは一夫一妻制であることで、精子が劣化していったということらしい。

他の生物は、メスの排卵時に、複数のオスの精子が競争することによって、

力のある精子だけが生き残り、受け継がれていくが、

人間の場合、他のオスとの競争は無い。

なので、それほど優秀でない精子でも生き残れるわけだ。

まして、今は、精子を1つ取り出して、卵子に直接受精させることも可能になっているため、

精子が活発で無くても、よいことになる。

精子は劣化の一途をたどっている。

人間が人間の幸福を考えた倫理観が、

生物としての最も大切な機能(種の存続)を低下させ、失わせている。

人間が、もっとふしだらなら、元気のいい精子のみが選択されるということになると、

生物としての人間と、人間としての人間は相容れないもので、

それが人間のジレンマなのかと思う。

デンマークの調査によると、デンマーク出生率が低下していないのは、

そういう生殖の補助機能(人工授精など)があってのことで、

精子の衰退により、自然任せでは人口の減少は免れないという。

問題は、一夫一妻制だけでなく、近年特に精子が劣化していることで、

この原因が化学物質か、電磁波か、喫煙か、ストレスかは、わかってはいない。

ただ、このままでは、男の繁殖能力は落ちていく。

いずれは、すべて人工授精に頼らざる負えなくなる日がくるかもしれないが、

驚いたのは、それだけではない。

男という性を決定するのはYという染色体なのだけど、

そのY染色体が衰退しているという。

すでに14分の13は無くなってしまっている。

およそ、今から1000万年後には、Y染色体は無くなると予測されている。

XXだと女。XYだと男。

Y染色体が無くなると・・・・・

ただ、元々がそのY染色体は、衰退する運命にあるものだということで、必然なのです。

そういう意味では、人間はまだまだ進化の途中にあって、

この先またどのような変化があり、

またどのように人間が手を加えていくのかは未知の世界ですね。

現在最強のY染色体といわれているのが、チンギス・ハーンで、

チンギスハーンの染色体を受け継ぐ男は1600万人いるという。

1つの染色体が1600万倍に増えた・・・

私が男の象徴のように感じているチンギスハーンは、やっぱり最強の男だった。

戦いに勝ったY染色体は繁栄し、負けたYは淘汰される。

勝ち負けにこだわった男の野望そのままに、Y染色体は今も繁栄をしている。

日本には、すでにY染色体の無いトゲネズミというのがいるとのこと。

じゃートゲネズミにはオスがいないかと思えば、オスはいる。

どういうことか?

トゲネズミは特別天然記念物で勝手に調べられないので、よくわかっていないと。

これもまた、社会が板挟みになっている問題で、自然保護と科学の問題。

実は、ほとんどの生物はメスだけでも子孫を作れるらしい。

処女受胎に驚くけど、

出来ないのは哺乳類だけ。

哺乳類は、胎盤を得て、子どもをお腹の中で育てることに成功した。

卵で育てるより、ずっと安全で母体から栄養を摂れるという面でも他の生物より有利といえる。

その胎盤を作るのに必要なのが、Y染色体らしい。

その代わり、Y染色体の退化というデメリットも引き受けた。

日本の研究グループは、メスのネズミだけで子どもを産ませることにも成功している。

ふむ。。。

今も生命の倫理観が問われているけど、

精子が衰退、Y染色体が消え去る頃には、事情は全然違ってきて、

人類滅亡の危機の前に倫理観うんぬんなんてもう言ってられないでしょう。

自然のままでいることは、人類を滅亡に向かわせることになる。

もしかしたら、Y染色体が消滅し、胎盤が作れなくなったら、

人間のメスもオス無しに卵を生み始めるかもしれないですね(笑)

そういえば、

人間は2本足で歩くようになったこと、脳が大きくなったことで、産道が限界なのだそうだ。

赤ちゃんが育つのを待っていたら、産み落とすことが出来なくなる。

だから、人間はまだ育っていない赤ちゃんを産むほかない。

馬やキリンなどが、生まれてすぐ立ち上がるのがすごいのでなく、

首も座ってないうちから生まれてこなければいけない事情をもった人間が特別なのです。

首も座らない子どもを育てるのには、どうしても母親だけでは無理で、

だから人間にはパートナーが必要だった。

それを思うと、人間の赤ちゃんは、誰もがまだまだ未完全な状態で生まれてきていることに気づく。

乳飲み子への母親の愛情、父親の協力がいかに重要か。

そのパートナー選びのために、人間は恋愛のメカニズムが進化したということらしい。

そんな人間なのだけど、生物学の面からいうと、

パートナーを必要とするのは出産から4年間だそうです。

それ以降は男女がどうしても、ひっついていなければいけないものは、元々人間に組み込まれていない。

他の男性や女性に目移りしてしまうのも、人間の性なのか、はたまた、遺伝子のなせるわざなのか。

結局、遺伝子が進みたがっている方向に人間は向かうだけなのかな。

自分の意志と思っているもっと深いところで、遺伝子が恋をさせ、遺伝子がパートナーを決め、

遺伝子が子育てをする。

意志を決定しているものが遺伝子なのかなぁ。

そう言ってしまうと、身を焦がすような恋にしても、身も蓋も無くなってしまいますけどね。